トランスジェニックキャット


    遺伝子操作で「緑色に光る猫」、エイズ治療に道=米研究
    http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1740591&media_id=52

    既に時機を逸した感がありますが、折角の専門分野なので、日記にしておきます♪

    まぁ記事を読んでもぴんとこなくって、タイトルから
    「緑色に光ったらエイズが治った」とななめな解釈をしてしまうかもしれませんが、これは記事の書き方(というか、タイトルのつけ方)が悪いですね。


    まず、緑色に光るってのが、どういう仕組みか、ということから。

    GFP(Green Fluorescent Protein)は、日本の研究者下村脩先生によって、発見されたオワンクラゲ由来のタンパク質です。この業績により、下村先生は2008年にノーベル化学賞を受賞されました。
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%91%E8%89%B2%E8%9B%8D%E5%85%89%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E8%B3%AA

    このクラゲのタンパク質は、「生体に何も影響を与えないで光らすだけ」という性質があるので、細胞を標識するのに非常に便利で、生物学の実験で一般的に使われています。

    ですので、緑色に光らすことは、エイズには何の効果もないのですw
    ちょっとサイバーな感じで、びびりますが。

    蛍光を発するタンパク質は、なにも緑じゃなくても良くて、赤色(RFP,Red Fluorescent Proteinだの、イソギンチャクモドキのたんぱく質DsRedとか)や、オレンジ(mKO1)、シアン、ピンク、イエローとよりどりみどりですhttp://www.tsienlab.ucsd.edu/Publications/Shaner%202005%20Nature%20Methods%20-%20Choosing%20fluorescent%20proteins.pdf
    大体は海の生物のタンパク質が流用されますね

    これらは、基本的に脊椎動物には無いタンパク質で、「光らす」という役目しか持っていないはずなのですが、中には細胞に弱い毒性を示すものもあります(あまりに強い発現量だと発生段階で死んでしまう)。GFPはこれら蛍光タンパク質の中でも最もマイルドで、細胞に毒性が無いことが知られています。

    なので、遺伝子をいじくった動物を作ろうと思うと、ファーストチョイスがGFPになるんですね。

    以下に緑色の遺伝子改変動物を列挙します。

    緑のネズミなんかかなり一般的に動物実験に使われ始めています。
    http://kumikae01.gen-info.osaka-u.ac.jp/tg/tg-ad.cfm
    緑のウサギもいます
    http://php.med.unsw.edu.au/embryology/index.php?title=2009_Group_Project_1
    緑のショウジョウバエ
    http://www.wpi.edu/Pubs/E-project/Available/E-project-083009-231151/unrestricted/Ben,Ben,Jared,KatherineIQPFinal.pdf
    緑のピグミーマーモセット
    http://www.sciencedaily.com/releases/2009/05/090527215547.htm
    緑の犬と猿
    http://www.wonderhowto.com/news/wonderment/fluorescent-puppies-you-can-turn-and-off-0125885/
    緑の豚(紅ではないw)
    http://www.technovelgy.com/ct/Science-Fiction-News.asp?NewsNum=881
    緑のメダカ
    http://www.flickr.com/photos/wellcomeimages/5987579075/

    とかとか、ですね。

    でも猫が無かった。
    じゃぁ作りましょう、というわけです。


    しかも、ネコはHIVの研究に有用なのです。

    なぜなら近代において、AIDSがパンデミックになった種は、ヒトとネコしかないからです。
    http://www18.ocn.ne.jp/~madamzoo/Foster/fiv.html

    なので、ネコエイズの研究をすれば、ヒトエイズにも役に立つかも、と「期待されます」


    なぜ括弧書きかって?
    今回の記事にもあるように、「今から検証」なので、今回のは「遺伝子を改変したネコが作れた」という記事でしかないのです。


    なので、「ぬこが光ったらエイズが治った」というのでは全然ありません。


    個人的に印象的だったのが
    ・ネコは一般的なネコ(つまりふつーのヌコ)をつかってできたこと
    ・ネコのESやiPSは既に製作されているが、あえて古典的な受精卵へDNAを打ち込む方法をとったこと
    ・レンチウイルスベクターを前核注入ではなく、直接マイクロインジェクションしていること
    ・レンチベクターの構造。sin(Self Inactivating)タイプであること。なにかポイントなのか?
    ・生殖系列に載っている(全ての細胞に分化した)高寄与率のキメラネコが、1/100くらいの確率でできていること(1%ですが、これでも高確率だと思います。0.1%が普通の世界ですから)
    ・複数のベクターを同時に導入できていること
    ・ネコの胚盤胞の培養条件が確立されたこと

    こんなところですなぁ。。。


    ちなみに、クローンネコは既に作成されていて、
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=Generation%20of%20cloned%20transgenic%20cats%20expressing%20red%20fluorescence%20protein.%20Biol.%20Reprod.%2078%2C%20425%E2%80%93431
    このときに赤く光るネコは作られてます。
    なので、ネタとしてはそんなに新規性はありません。
    なので、Nature誌でも「確立されている技術紹介」の位置づけであるNature Methodsにて発表されています。本論文では、丁寧なプロトコールの記載と、効率的な作成の仕方が載っているので、興味深いです

    あ、念のためですが、

    「三毛猫をクローン技術で生き返らせても、同じ三毛猫はできません」
    三毛の割合は確率で決まりますので、サイコロ同様、同じ目が出ないのです。


    写真:
    赤く光るネコ。実は2008年に既に発表済み
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    プロフィール

    NakatakeYuhki

    Author:NakatakeYuhki
    東京に在住している研究者です。
    専門:分子生物学、幹細胞生物学、発生生物学、DNA修復、転写制御機構。生物全般に興味があります。

    反似非科学。懐疑論的な考え方をします。

    薬学畑。出身は関西。

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